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鼠径ヘルニア

鼠径（そけい）ヘルニアとは？

ヘルニアとは『飛び出る』という意味の医学用語です。下腹部の足の付け根の事は鼠径（そけい）部と呼ばれ、ちょうど筋肉が弱くなる部分があります。この鼠径部から本来はお腹の中にあるべき臓器が『飛び出してくる』状態が、鼠径ヘルニアです。

飛び出してくる臓器としては腸管（小腸や大腸）であることが多いので、鼠径ヘルニアは『脱腸』とも呼ばれます。

鼠径ヘルニアになりやすい人は？

重い物を持つ、力仕事をしているなど、腹圧がかかりやすい仕事に従事している方は鼠径ヘルニアを発症しやすいと考えられています。また、中高年以降の方は筋肉などの組織が弱くなりやすいため、鼠径ヘルニアになりやすいです。

  • 中高年の男性
  • 子どもを産んだことがある女性
  • 咳を頻繁にする方
  • 立ち仕事に従事している方
  • 重量物を持つことが多い方
  • 力仕事に従事している方
  • 便が出にくい方
  • 肥満の方
  • 激しい運動をしている方

チェックリスト

鼠径ヘルニアは、鼠径部と呼ばれる足の付け根に症状が出現することが多いです。
自覚症状が現れる場合が多く、以下の項目で当てはまることがあれば当院にお問い合わせください。

  • 立ち上がると鼠径部が膨らむ
  • 鼠径部がつっぱる感じがする
  • 鼠径部が腫れている気がする
  • 腸が引っ張られている気がする

気づく症状は人それぞれです。立ち上がった時や咳をした時、腹圧をかけた時などに、足の付け根に違和感を覚える場合は鼠径ヘルニアを発症しているかもしれません。

鼠径ヘルニアを放っておいたら？

ヘルニア嵌頓（かんとん）には要注意！

発症当初は特に痛みも感じず、膨らみも手で押すとすぐに引っ込むことがほとんどです。そのまま放置すると、症状が増悪して膨らみが大きくなるとともに、不快感や痛みが生じる場合があります。

さらに、腸が飛び出したり・戻ったりという事を繰り返していると、稀に飛び出した腸が戻らないままの状態になってしまうことがあります。この状態はヘルニア嵌頓（嵌頓）といわれ、飛び出したままの腸への血流が低下し、腸の壊死や腸閉塞を生じることになります。ヘルニア嵌頓が起こった場合は、鼠径部の激痛・腹痛・嘔吐といった、いつもとは異なった症状が出現しまして、緊急の処置・対応が必要となります。ヘルニア嵌頓を起こさないようにも、手術で治療するのが大切です。

当院での手術適応

日帰り手術に対応しております

当院での手術適応鼠径ヘルニアは良性疾患です。しかし、ヘルニア嵌頓により重篤な状態となる可能性もありますし、ヘルニアの脱出時には痛みなどで普段の生活に支障が出ることもあります。鼠径ヘルニアは、放置して治ることはないために、根治のためには手術が必要になります。

種類

鼠径ヘルニア

外鼠径ヘルニア

鼠径靭帯（お腹と足の境目）の上で、外側から出てくるヘルニアです。鼠径ヘルニアでは一番多いヘルニアです。

内鼠径ヘルニア

鼠径靭帯（お腹と足の境目）の上で、内側から出てくるヘルニアです。40歳以降の男性に多いヘルニアです。

大腿ヘルニア

鼠径靭帯（お腹と足の境目）の下から出てくるヘルニアです。40歳以降、痩せ型で多産の女性に多いヘルニアです。大腿ヘルニアは、子どもを産んだことがある女性に多く発症するヘルニアです。

当院での鼠径ヘルニアの治療法・手術方法

鼠径部切開法

ダイレクトクーゲル法

※ダイレクトクーゲル法で用いるメッシュ

※メッシュプラグ法で用いるメッシュ

当院で行う鼠径ヘルニアの手術法は、鼠径部切開法になります。膨らんでいる部分の真上の皮膚を4~5㎝切開します。腸が飛び出るスペース（ヘルニア嚢）と周りの筋肉などの間を丁寧に剥がしてゆきます。

弱くなった鼠径部を補強するためには、医療用のメッシュ（網）を使用します。ヘルニアの状態に応じて、使用するメッシュ種類やメッシュを挿入する位置を決定します。（ダイレクトクーゲル法、メッシュプラグ法、リヒテンシュタイン法から最適な手術法を選択します。）。

鼠径部には、陰部大腿神経陰部枝、腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経などの幾つかの知覚神経が走っています。これらの神経にダメージが加わってしまうことで手術後に神経疼痛が起こるリスクがあるため、可能な限り損傷しないように最大限の注意を払っております。

手術費用

  手術費用（１割負担の場合） 手術費用（３割負担の場合）
診察、超音波検査、術前検査 約2,300円 約7,000円
鼠経ヘルニア日帰り手術 15,000～17,000円 45,000～50,000円

※術前術後の病状によっては追加検査が必要となり、費用が増えることもあります。

鼠径ヘルニアQ&A

鼠径ヘルニアは自然になおりますか？

鼠径部の腹壁が弱くなった状態ですので、自然には治ることはありません。鼠径ヘルニアを長期間放置すると、ヘルニア嵌頓という腸が飛び出たままの重篤な状態になることもありますので、適切な時期に手術をうけることをおすすめしています。

鼠径ヘルニアはヘルニアバンドや薬で治りますか？

ヘルニアバンドを巻いている間には腸は脱出しにくいですが、あくまでも一時的な対症療法になります。根治のためには、手術が唯一の治療法です。

鼠径ヘルニアの手術費用はいくらですか？

手術の前に、診察とエコー検査と術前検査（血液検査・心電図・レントゲンなど）が必要でして、保険3割負担の方は、5000～6000円になります。手術当日、鼠径部切開法を行うと、保険3割負担の方は、4～6万円の支払いになります。

どのような麻酔方法で手術を行うのですか？

鼠径へルニアの手術は、全身麻酔+局所麻酔でおこなっています。全身麻酔には、点滴または吸入の麻酔薬を使用して、いわばウトウトした状態で行います。手術のこともはっきりと覚えていない方が多く、つまり手術中の不安や痛みを感じにくい状態ということになります。手術をする部位には局所麻酔薬を使用します。局所麻酔薬には、作用時間の長い麻酔薬を併用しますので、その他の鎮痛剤とあわせて術後の痛みも出来るだけ抑えるように配慮しております。

傷の抜糸はありますか？

当院では、皮膚は吸収糸（溶ける糸）による埋没縫合で行います。したがって、抜糸の必要はありません。

シャワーや入浴はいつからできますか？

手術翌日からはシャワーが、手術翌々日から入浴が可能です。

仕事はいつからできますか？

デスクワークや軽作業であれば、手術翌日から可能です。術後1週間程度はお腹や傷に力がかかるような事は避けた方がよいので、そのようなお仕事の方は配慮してください。体調や傷の痛みと相談しつつ、仕事を再開するタイミングを決めるようにしてください。